「歯周病って、一度なってしまったらもう治らないんですか?」 診療をしていると、このようなご質問をいただくことがあります。
結論からお話しすると、歯周病は早い段階であれば健康な状態を取り戻せる可能性があります。 一方で、歯周病が進行して歯を支えている骨まで失われてしまうと、 何もしなくても完全に元の状態へ戻る、というわけにはいきません。
ただし、ここで「それなら治療しても意味がない」と考える必要はありません。 歯周病治療の大切な目的は、炎症や原因となる細菌を減らし、 病気の進行を抑えて、できるだけ長く自分の歯を守ることです。
今回は「歯周病は治るの?」という疑問について、 歯肉炎と歯周炎の違いから実際の治療方法、治療後に気をつけていただきたいことまで、 できるだけ分かりやすくお話しします。
この記事で分かること
- 歯周病は本当に治るのか
- 歯肉炎と歯周炎では何が違うのか
- 歯周病で失われた骨は元に戻るのか
- 歯周病治療では何をするのか
- 歯石を取るだけで歯周病は治るのか
- 歯周病の再発を防ぐために大切なこと
歯周病は治るのでしょうか?
まず知っておいていただきたいのが、 一般的に「歯周病」と呼ばれている病気にも段階があるということです。
歯ぐきだけに炎症が起きている比較的初期の状態を「歯肉炎」、 炎症がさらに進み、歯を支える歯槽骨などの歯周組織にまで影響が及んだ状態を 「歯周炎」といいます。
歯肉炎の段階であれば、歯垢や歯石など炎症の原因を取り除き、 毎日の歯みがきを改善することで、 歯ぐきが健康な状態へ戻っていくことが期待できます。
一方、歯周炎まで進行し、歯を支えている骨が失われている場合は少し話が変わります。 炎症を抑えて歯周病の進行を止めたり、 安定した状態を維持したりすることは目指せますが、 失われた組織がすべて自然に元通りになるとは限りません。
歯周病治療では、炎症を改善し、病気の進行を抑え、 安定した状態を維持することが重要です。 進行した歯周病では、失われた歯槽骨などが完全に元通りになるとは限りません。
そもそも歯周病はどうして起こるの?
歯周病の大きな原因となるのが、歯の周囲に付着するプラーク(歯垢)です。 プラークは単なる食べかすではなく、多くの細菌を含んだものです。
歯と歯ぐきの境目にプラークが残った状態が続くと、 細菌の影響によって歯ぐきに炎症が起こります。 すると、歯ぐきが赤くなったり、腫れたり、 歯みがきをした時に出血したりするようになります。
この段階でしっかりケアできればよいのですが、 炎症が続くと歯と歯ぐきの間にある「歯周ポケット」が深くなり、 その内部にも細菌が入り込みやすくなります。
さらに進行すると、歯を支えている歯槽骨が少しずつ失われ、 最終的には歯がグラグラする状態になることがあります。
歯周病は痛くないまま進むことがあります
歯周病の怖いところは、初期から中期では強い痛みが出ないことが多い点です。
虫歯の場合は「冷たいものがしみる」「ズキズキ痛む」といった症状をきっかけに 歯科医院を受診する方が多いのですが、 歯周病はかなり進行するまで本人が気づかないことがあります。
「痛くないから大丈夫」と思っていたのに、 検査をしてみると歯周ポケットが深くなっていたり、 レントゲンで歯を支える骨が減っていることが分かったりするケースもあります。
そのため、痛みの有無だけで歯周病かどうかを判断することはできません。
歯ぐきから血が出る、歯ぐきが腫れる、口臭が気になる、 歯ぐきが下がってきた、歯が長くなったように見えるなど、 少しでも変化を感じたら一度歯科医院で確認することをおすすめします。
歯肉炎なら元の状態に戻る可能性があります
歯周病のごく初期である歯肉炎では、 炎症が主に歯ぐきにとどまっています。
この段階では歯を支える骨への大きな影響がないため、 原因となっているプラークや歯石を取り除き、 正しい歯みがきを続けることで、 腫れや出血が改善して健康な歯ぐきへ戻っていくことが期待できます。
だからこそ、歯周病は早く見つけることが大切です。
「歯みがきすると少し血が出るだけだから」 「そのうち治るだろう」 と放置してしまう方もいらっしゃいますが、 歯ぐきからの出血は炎症のサインである可能性があります。
痛くない段階で受診していただいた方が、 治療の負担を小さくできる可能性も高くなります。
歯周炎まで進むと何が違う?
歯肉炎からさらに炎症が進行すると、 歯を支えている組織にまで影響が及ぶ「歯周炎」になります。
歯周炎では歯周ポケットが深くなり、 歯ブラシだけでは届かない場所にプラークや歯石が付着するようになります。
特に歯ぐきの中に付着した歯石は、 ご自身の歯みがきだけで取り除くことはできません。 歯科医院で専用の器具を使って除去する必要があります。
さらに歯周炎が進行すると歯槽骨が減少し、 歯を支える力が弱くなります。 重度になると歯が動いたり、噛んだ時に違和感が出たり、 最終的には歯を残すことが難しくなることもあります。
歯周病で溶けた骨は元に戻る?
「歯周病で骨が減っていると言われました。治療すれば元に戻りますか?」 これも患者さまからよくいただく質問です。
歯周病によって失われた歯槽骨は、 歯石を取ったり歯みがきを改善したりするだけで、 必ず元の高さまで自然に再生するわけではありません。
ただし、歯周病の状態や骨の欠損の形などによっては、 歯周組織再生療法などが検討されるケースもあります。
すべての方に適応できる治療ではないため、 レントゲン検査や歯周ポケットの検査などを行い、 歯を支えている組織がどの程度残っているのかを確認したうえで判断します。
大切なのは「骨が完全に元に戻るか」だけではありません。 現在残っている歯周組織をできるだけ守り、 これ以上歯周病を進行させないことが非常に重要です。
歯周病治療では何をするの?
歯周病治療というと、 「歯石を取るだけでしょう?」と思われる方もいるかもしれません。
もちろん歯石除去は重要ですが、 歯周病治療はそれだけではありません。
まずは歯周ポケットの深さや出血の有無、 歯の動揺、プラークの付着状況などを確認し、 必要に応じてレントゲンで歯を支える骨の状態も調べます。
そのうえで、お口の状態に合わせて治療を進めていきます。
1.歯みがきの状態を確認する
歯周病治療でとても大切なのが、毎日の歯みがきです。
歯科医院できれいに歯石を取っても、 毎日の歯みがきでプラークが残り続けていれば、 また炎症が起こってしまいます。
「ちゃんと磨いているつもりなのに歯周病になった」という方も少なくありません。 そのような場合は、磨く時間ではなく、 歯ブラシが必要な場所にきちんと届いているかを確認することが大切です。
2.歯石やプラークを除去する
歯石は歯ブラシでは取れないため、 歯科医院で専用の器具を使用して除去します。
歯ぐきより上に付着している歯石だけでなく、 歯周ポケットの中に歯石が付着している場合は、 歯ぐきの中まで丁寧に清掃する必要があります。
歯の根の表面に付着した歯石や汚れを除去し、 細菌がたまりにくい環境をつくっていきます。
3.治療後にもう一度検査する
歯石を取ったら、それで治療終了とは限りません。
基本的な歯周病治療を行った後、 歯ぐきの腫れや出血、歯周ポケットの深さなどが どの程度改善したのかを改めて確認します。
改善していればメンテナンスへ移行しますが、 深い歯周ポケットが残っている場合などは、 状態に応じて追加の治療を検討します。
歯石を取れば歯周病は治る?
「歯周病なら歯石を取れば治りますか?」というご質問もよくあります。
歯石を取ることはとても大切ですが、 それだけですべてが解決するわけではありません。
歯周病の原因となるプラークは、 毎日の生活の中で少しずつ歯の表面に付着していきます。 そのため、歯科医院で歯石を除去した後も、 ご自宅での歯みがきがうまくできていなければ、 再び炎症が起こる可能性があります。
逆に言えば、 歯科医院での治療と毎日のセルフケアを両方続けることが、 歯周病を安定させるうえでとても重要です。
歯周病は歯みがきだけで治せますか?
歯肉炎のように初期の段階であれば、 正しい歯みがきを続けることで炎症が改善することがあります。
しかし、歯石が付着している場合や、 歯周ポケットが深くなっている場合は、 歯みがきだけで原因を取り除くことは難しくなります。
特に歯ぐきの中に付着した歯石は、 歯ブラシでは取り除けません。 この場合は、歯科医院での処置が必要です。
「毎日きちんと磨いているから大丈夫」と思っていても、 ご自身では見えにくい場所に歯石が残っていることがあります。
歯周病が気になる場合は、 歯みがきだけで様子を見るのではなく、 一度検査を受けて現在の状態を確認しておくことをおすすめします。
重度の歯周病でも歯を残せることはありますか?
歯がグラグラしていたり、 「歯周病がかなり進んでいます」と言われたりすると、 「もう抜くしかないのでは」と不安になると思います。
もちろん、すべての歯を残せるわけではありません。 歯を支える骨がほとんど残っていない場合や、 感染が強く、周囲の歯にも悪影響を与える可能性がある場合には、 抜歯を検討しなければならないこともあります。
ただし、重度の歯周病だからといって、 必ずすぐに抜歯になるとは限りません。
歯周ポケットの深さ、骨の残り方、歯の揺れ、 噛み合わせ、歯の根の状態などを総合的に確認し、 残せる可能性があるかどうかを判断します。
久保田歯科クリニックでは、 できるだけご自身の歯を残すことを大切にしています。 ただし、無理に残すことでかえってお口全体に悪影響が出る場合もあるため、 状態を見ながら慎重に判断します。
歯周病は治療しても再発しますか?
はい。歯周病は治療によって状態が安定しても、 その後のケアが不十分だと再発する可能性があります。
歯周病の原因となる細菌は、 一度治療したら永久にいなくなるわけではありません。
日々の歯みがきが不十分になったり、 定期的なメンテナンスを長期間受けなかったりすると、 またプラークや歯石がたまり、 炎症が再び起こることがあります。
そのため、歯周病治療が終わった後も、 良い状態を維持するための定期的な管理がとても重要です。
歯周病を再発させないために大切なこと
毎日の歯みがきを丁寧に続ける
歯周病予防の基本は、 毎日の歯みがきです。
特に歯と歯ぐきの境目、 歯と歯の間は汚れが残りやすいため、 意識して磨くことが大切です。
歯ブラシだけでは十分に落とせない場所には、 デンタルフロスや歯間ブラシを併用することもあります。
定期的に歯科医院でチェックを受ける
歯周病は、自分では変化に気づきにくい病気です。
「特に痛くないから大丈夫」と思っていても、 歯周ポケットが深くなっていることがあります。
定期的に歯ぐきの状態や歯石の付着を確認することで、 再発や悪化を早く見つけやすくなります。
喫煙習慣がある方は注意が必要です
喫煙は歯周病のリスクに関係する要因のひとつです。
タバコを吸っている方では、 歯ぐきの血流が悪くなり、 炎症のサインである出血が目立ちにくくなることがあります。
見た目では歯ぐきに大きな変化がなくても、 歯周病が進行している場合があるため注意が必要です。
噛み合わせも確認する
歯周病が進行している歯に強い噛む力が集中すると、 歯を支えている組織にさらに負担がかかることがあります。
必要に応じて噛み合わせを確認し、 一部の歯に過度な力がかかっていないかを見ることも大切です。
「痛くなってから」ではなく、気になった時に相談してください
歯周病は、痛みが出てから治療を始める病気ではありません。
むしろ、痛みが出ていない段階で見つけて、 早めに対応することが大切です。
「歯ぐきから血が出る」 「以前より歯ぐきが下がった気がする」 「口臭が気になる」 「歯が少し動く感じがする」 という変化があれば、 まずは一度お口の状態を確認してみましょう。
歯周病かどうかは、 症状だけでは正確に判断できません。 歯周ポケットや歯を支える骨の状態などを検査して、 はじめて進行度が分かります。
金町・葛飾区で歯周病が気になる方へ
久保田歯科クリニックでは、 歯ぐきだけを見るのではなく、 歯周ポケット、歯石、歯を支えている骨、 噛み合わせ、毎日の歯みがきの状態などを確認しながら 歯周病治療を進めていきます。
「歯周病と言われたけれど本当に治るの?」 「歯を抜かずに残せるか相談したい」 「最近、歯ぐきから血が出る」 という方も、まずは現在のお口の状態を確認するところから始めましょう。
歯周病は、早く気づいて治療を始めるほど、 歯を守れる可能性が高くなります。
よくある質問
歯周病は完全に治りますか?
歯肉炎の段階であれば、原因を取り除くことで健康な歯ぐきへ戻ることが期待できます。 一方、歯周炎で失われた歯槽骨などは、すべて自然に元通りになるとは限りません。 炎症を改善し、進行を抑えて安定した状態を維持することが大切です。
歯周病は歯石を取れば治りますか?
歯石除去は重要ですが、それだけでは十分とは限りません。 毎日の歯みがきや、その後の定期的なメンテナンスも重要です。
歯周病は歯みがきだけで治せますか?
初期の歯肉炎であれば改善することがありますが、 歯石や深い歯周ポケットがある場合は歯科医院での治療が必要です。
歯周病で減った骨は元に戻りますか?
自然にすべて元通りになるとは限りません。 状態によっては歯周組織再生療法が検討される場合がありますが、 適応できるかどうかは検査が必要です。
歯周病は一度治療すれば再発しませんか?
再発する可能性があります。 治療後も毎日のセルフケアと定期的なメンテナンスを続けることが大切です。
まとめ
「歯周病は治るのか?」という質問への答えは、 歯周病がどこまで進行しているかによって変わります。
歯ぐきだけに炎症がある歯肉炎の段階であれば、 原因を取り除くことで健康な状態を取り戻せる可能性があります。
一方、歯を支えている骨まで失われた歯周炎では、 失われた組織がすべて自然に元通りになるとは限りません。
それでも、歯石やプラークを取り除き、 毎日の歯みがきを改善し、 定期的なメンテナンスを続けることで、 炎症を抑え、歯周病の進行を防ぎながら 自分の歯を長く守ることを目指せます。
歯周病は痛みが少ないまま進行することがあります。 「まだ大丈夫」と思って放置せず、 気になる症状があれば早めに相談することが大切です。